僕は小さいころからずっとサッカーをやっていてプロサッカー選手になるのが

夢でした。高校はサッカーの強豪高校に行って、大会でもいい所まではいけたん

ですが、結局プロにはなれなかったです。当時はプロになることしか考えていな

かったので、卒業してもとりあえずバイトだけして過ごしていました。　　　　

そんな中で親戚の笠原さん（当時の社長）から「ふらふらしとるなら、うちで働か

んか？」と声をかけてもらって、入社しました。当時は、行く行く社長になるとか

そういった話は全くなく、ただ一社員として働いていました。しばらくして、僕は

知らなかったんですが、笠原さんが高齢のため、会社を閉めるかどうするか迷われて

いたようで、それで、僕にやってみないかという話がありました。もちろんそんなつ

もりで入社したわけではないので戸惑いましたよ。他の従業員の方の再就職のことも

考えると閉めずに継続した方がいいことも分かっていたので、引き受けることにしたん

です。でも、技術的にもまだまだ未熟でただの社員だった二十歳やそこらの若者が、社

長として従業員さんたちに認めてもらうのは簡単ではありませんでした。当然ですよね

。だから、自分を認めてもらいたい、どうしたら認めてくれるんだろう、と考えました。

技術的には何十年もやっている人たちには敵わないので、みんなが嫌がる仕事を率先して

やろう、と決めました。例えば、クレームがあった時には全部自分が引き受けて対応した

りとか、毎朝トイレ掃除をやるとかです。面倒な仕事は全部自分がやれば、少しずつ考え方

も変わってくれるかな、と思っていたからやっていました。とにかく当時は認めてもらいた

くて必死でした。そうしたら、1年、2年と経ってくると、やっぱり認めてくれるようになる

わけです。

新型製品の試作は全くの0から自分たちで作り上げなければなりません。作り上げるのが大変な

ので、それができるようになることは嬉しいしやりがいになりますね。

金型には流し込むのである程度形にはなりますが、最初はいろいろ不具合が出るので、自分の知識

や経験を活かして、「成形条件」と呼ばれるものを変えて不良内容を改善していきます。例えば、

溶かす温度を今より５度ずつ上げて溶かして流してみようだとか、流すスピードを一定に流していた

のを部分ごとに早くしたり遅くしたりしてみようだとか、そういった試作の段階で、トライを重ねて

、新型の物をうまく量産製品として流せるようになるというのは、やりがいを感じますし、そういっ

たいいものが作れた時というのは達成感があります。